静岡県内農業生産法人等のBCP対策への取組

投稿者  東海三ブッロク 大石育三

事例2.B社(野菜作農業)

(1)法人の概要                   

 A株式会社は、富士山西麓の静岡県S市のK地区、A地区に約5haの耕作放棄地を活用して、青ネギ生産、土壌分析,資材販売(肥料・農薬),コンサルティング事業を平成29年2月7日に独立して、儲かる農業のビジネスモデルを構築するために、資本金500万円で創業した。
  代表者は、奈良県出身で現在31歳、奥様も役員として作業場の責任者になっている。
 ネギは年三回の周年栽培が可能であるために、周年雇用が可能となることから、パート12名で、今後の売り上げ目標5,000万円を志向している
農業経営の現状と計画
  現在、当社では、畑は、借地5ha。  栽培施設は、借家として育苗施設700㎡にて生産。  年間の栽培回転期間は、年3回。
 農業経営の課題としては、青ねぎ(ネギ全般に言える)の生産には収穫後に選別調整作業が必要となり、畑での作業時間と収穫後の作業時間を比べると、前者が2割で後者が8割というデータもある。
 生産コストの大半を占めることから、選別スピードも品質の改善は重要である。

(2)経営の課題点 

 A社の経営の課題としては、今後、青ネギ事業を5,000万円とする目標を達成するためには、以下の課題を解決することである。
1)前期の決算による一人当たりの生産性について、557千円であり、生産性向上が欠かせない。そのためには、加工現場の改善が必要とみられる。
2)農場現場のIT化を目指し、ロボットの活用も視野に入れておくことである。
3)経営面では、前期の決算は農業簿記ではないので、来期からは労務費等を製造原価に参入することで、経営比較の出来る資料とすることである。

重要業務(売上高の高い作目等)と許容中断時間
 A社の販売先は、静岡県内の卸先のみであるので、重要業務は、卸先の納品先が関東地区の弁当屋であることから、災害時には、早期に回復してネギを提供することが欠かせないので、許容中断時間90日を公表することが重要な業務となる。

(3)BCPに対する見解と今後の対応

 N県から移住して、現経営者の妻と友人との、家族労働であるので、BCPに関してのリスク意識は低いが、昨年の台風24号の時の停電により、加工が出来なくなったことがあり大変な面があった。
 ネギの土壌づくりの研究はしていたが、BCPということを聞くのは、初めてであったと感じられた。
 ネギは、大雨、突風によりネギが倒れることもあり、異常気象対策が必要である。しかし、ネギは断水があっても生育が可能な作目である。
 BCP ということを聞くのは、初めてであるが必要性はあると感じられた。

(4)農業BCPとしての問題点・課題  

 今回のA社代表者へのヒアリングにより、BCPという定義は初めてであったが、昨年の台風24号で卸先の会社が停電したことから、冷蔵機能が中断されたことで自家発電装置の必要性を感じさせられたようである。
 しかし、緊急時の情報連絡手段が無かったので、今後取り組むこととなる。
 また、東南海地震に備えて、ネギの生産地について他県に分散化することが必要である。
 ネギは、水無くても育ち、畑には水が必要ではないために災害に強い作目であるということが、強みとなっている。             

(5)コメント

 当社は平成29年に新規就農者としてF市にて起業し、当初はよそ者として耕作放棄地も借りることができませんでしたが、地元農林事務所を通じて専門家派遣で初めてお会いしました。
 九条ネギを地元のブランドとして商品化することについて、BCPを通じてリスクをアドバイスしました。生産地を分散化することを提案しました。
 昨年は、県の農林漁業奨励賞を受賞しました。